オリジナル・ラブの田島貴男による弾き語りツアーのファイナルのステージである。オリジナル・ラブではなく田島貴男名義であることにどのような意味があるのかは定かではない。MCでは弾き語りのツアーは今回が初めてということだったが、ファンならば”ひとりソウルショー”と題した、彼流の弾き語りライブをオリジナル・ラブ名義でやっていることはご存知だろう。これもこの日のMCによると、”ひとりソウルショー”は「ひとりバカ騒ぎみたいにみんなを巻き込む感じ」ということで、しっとり聴かせるこの日のスタイルとは違う、ということらしい。実際、この日のステージは全編、椅子に腰掛けての演奏である。というわけで、敢えて田島貴男名義の理由を探せばしっとりとした弾き語りだから、ということなのかもしれない。
もっとも、彼のライブが最後までしっとりとしているわけもなく、そもそも1曲目の歌い出しから、彼一流のねっとりとした歌声を響かせて、いわゆる弾き語りのイメージを完全にはみ出す脂っこさだった。
この日の重要なお題のひとつは、6月末にリリースが決まったニュー・アルバムからの新曲をいち早く披露するというものだったが、このニュー・アルバムは本人の解説によると「斬新なアレンジで聴かせる異色作にして意欲作」なのだが、弾き語りではその斬新なアレンジが伝えられないというオチになっていた。だから、やっぱり新曲はリリースまでのお楽しみということになるわけだが、個人的にはリゾネーター・ギターやワイゼンボーン・ギターを駆使した演奏が、独特の郷愁を誘って印象的だった。この味わいがニュー・アルバムとどれくらいつながっているかはわかないけれど、いずれにしても田島自身の音楽的な興味がいよいよ大衆音楽の根っこに向かっていることをあらためて感じさせるライブだった。