2012.12.30.  藤井フミヤ@東京国際フォーラム

 ”Winter String"と題したスペシャル・ツアーのファイナルであると同時に、今年の活動を締めくくるステージでもある。"Winter String"ツアーは、10月の企画アルバム『Winter String』リリースを受けてのものだが、その内容から見れば7月にリリースされたアルバム『Life Is Beautiful』とそのツアーの発展型と言えるもので、演奏は有賀啓雄をバンマスとするいつものバンドに4人編成のストリングとサックスを加えた「ゴージャスな音のディナーを届ける」(Byフミヤ)というコンセプトのステージだ。

 フミヤ・ファンにしてみれば、「True Love」や「Another Orion」のような名バラードはもちろん聴きたいが、同時にアッパーなダンス・チューンで思い切り弾けたいというのが正直な思いだろうが、フミヤ自身は近年、歌ものを前面に押し出す傾向をどんどん強めているし、インタビューでもその指向をはっきりと表明している。ただし、ファンの思いを決してないがしろにしない彼のことだから、弾けたいファンの気持ちをどうやってボーカル・オリエンティッドなステージ構成のなかに着地させるかという試行錯誤がずっと続いてると言っていいだろう。

 その観点から見れば、この"Winter String"ツアーはかなり上手くいったステージなのではないか。ストリングスが入ることで、ダンス・ナンバーはフィリーソウルのようなメロウネスを加え、熱いロッカバラードにはいっそうの切なさが感じられた。つまり、弾けたい熱量をグルーヴィーに吸収しながら、その高揚を大人な味わい深さへと導いていったわけだ。

 もっとも、今回のステージの最大の見どころは彼が赤鼻のピエロに扮して見せるパントマイムのコーナーで、その短いパフォーマンスが続く楽曲のイメージをふくらませる役割も果たしながら、ステージ全体の展開にさらなる奥行きを加えていた。さらには、ピエロとしてのフミヤというキャラクターが加わることで、歌うフミヤとMCで笑わせるフミヤとのコントラストもいっそう際立つことになった。また、その演劇的な演出は、時に語るように歌うボーカル・スタイルにシャンソン的な味わいも感じさせた。

 来年はいよいよデビュー30周年ということになるわけだが、ステージ・パフォーマーとしての彼はまだまだ進化を遂げていきそうだ。