2012.7.22.   オリジナルラブ@SHIBUYA-AX

久しぶりのバンド編成によるツアー"OVERBLOW"のファイナル公演。20周年の昨年は弾き語りツアーだったから、このツアーが20周年のアニバーサリー・ツアーとも言えるだろう。

バンドは20年前と同じ編成だし、黒人音楽をベースにした熱くて濃いステージングは相変わらずと言ってもいいかもしれないが、音楽自体が伝える肌触りのようなものはかなり違っている。スーツ姿が基本だった昔はやはり音楽もソフィスティケイトを旨とし、熱さと洗練の拮抗が大きな魅力だったが、最近は熱さや濃厚さ、そしてそういう特質をむせかえるほどに発散する田島貴男自身の存在感がどんどん前に出てきて、その存在感の包容力でオーディエンスを説得してしまうという感じである。言い換えれば、黒人音楽ベースとは言っても、かつてのそれはアメリカ北部、もっと言えば英国経由の黒人音楽という印象だったのが、今はイリノイ鉄道でアメリカ南部に下ってきてもっと土臭さがもろに出ている。「ツアー中に買ってしまった」と言ってうれしそうに披露したシルバーのドブロギターをフィーチャーした演奏は、そうした変化を象徴的に伝えるものだろう。あるいは、この日も聴かせた「夜をぶっとばせ」に代表されるような、理由なき苛立ちやニヒリスティックな世界観に突き動かされていた印象のデビュー当時は意味としてはやはりロックだったが、例えばこの日の田島の歌がにじませた静かな哀しみやおおらかな歓びの感覚はゴスペルに通じるものであるように思われた。

田島貴男という音楽家が、自身の音楽性にしっかりと年輪を刻みながら展開してきたこと、そして現在も確実に深化の過程にあることをあらためて実感させるライブだった。