3月にスタートした”TRIAL TOUR”、そのファイナル(振り替え公演が1本残っているが)である。4月に渋谷クアトロで見たときとはだいぶ印象が違っていて、それは2ヶ月かけて全国をまわってきたんだから違うのは当たり前といえば当たり前なのだけれど、でもその違いはそういう本数を重ねたからこその違いという感じではないような気がしたから、なんだかこの日のステージは印象的だった。
この日のステージには、”20年選手”ならではと思わせるバンドの一体感や演奏の”ため”みたいなものを随所に感じさせながら、しかし”20年選手”らしい落ち着きとか堂に入った感じを漂わせることがなかった。と言って、もちろん若手バンドのように初々しい感じでもない。すごく充実しているのだけれど、でもその充実はすごく繊細なバランスの上に成り立っているような感じで、それはまさに山中さわおという人の人柄を連想させて、ということはやはりバンドの有り様がいつも以上にリアルに演奏化されていたと考えるべきなのかもしれない。
ひいきのバンドが年季を重ねて滋味を増していくのをリアルタイムで体験していくのはバンドを追いかける醍醐味のひとつだが、一方でどれだけ年季を重ねてもなんだか前のめりで一触即発な感じというか、次の瞬間には全然変わっているかもしれないと思わせる何かはらんでいて、だからこちらもずっと安心できない、というタイプのバンドがいる。僕にとってのthe pillowsはそういうバンドで、だからこそまたライブに出かけていくんだよな、ということをあらためて実感したライブだった。