スポーツ新聞の見出しなら「80年代の興奮、再び!!」みたいなことになるのかもしれないけれど、実のところ、80年代、90年代にはこの組み合わせは実現していない。それぞれに若い自意識と強い自負を抱えて独自に道を突き進むのに忙しかったせいもあるだろう。しかし、時の流れが気負う気持ちをずいぶんとフラットにしたはずだし、それにこの日は震災復興チャリティーという”大義”があった。だから、それぞれがそれぞれの”芸風”を持ち寄って、それぞれに往時の興奮を再びよみがえらせる、印象的なイベントになった。
そもそも、この日の3バンドがデビューした80年代はまだJ-POPなんて言葉はなかったし、ということはその言葉が意味する、良くも悪くも洗練されたポップ・ミュージックのフォーマットがまだ成立していなかったわけで、じつに多彩なサウンドがメジャーのフィールドでも試みられていた。この日の3バンドの競演が当時は実現しなかった理由のひとつは、単純に音楽性がずいぶん違っていたから、ということもあるだろう。
こうしたイベントでは、最初に出てきていきなり派手にやって驚かせ、さっさと帰ってしまう、というのが強い印象を残すパターンのひとつであるわけだが、でもこの日は2万人という数のオーディエンスがいて、しかも彼らがどういうノリ、どういうテンションなのか、読めないところもあったから、逆にこの日のトップバッターというのはある意味ではかなりリスキーだったと思う。が、米米CLUBは、ご存知の通り、筋金入りのエンターテイメント・バンドだ。客が最初どこを向いていようが、必ず自分のほうを向かせてしまう。この日は、フタを空けてみれば、真っすぐに前のめりだったオーディエンスの気持ちをまず焦らすようにいなし、お馴染みのヒット曲を続けて披露して寛がせ、そして最後は得意のファンキー&クレイジーな力技で会場をひとつにしてしまった。終盤の盛り上がったところで、プリプリとTMのヒット曲のフレーズを演奏に挟み込む遊び心も交えながら、熱くシニカルに、自らの個性をアピールしてみせた。
続くプリンセス・プリンセスは16年ぶりのステージ。「一生懸命練習してきたの。ホントよ。だって、がっかりさせちゃいけないでしょ」と、最初のMCで岸谷香は話したが、その前に1曲披露された演奏を聴いてオーディエンスはもうすっかり興奮していたはずだ。その16年というインターバルを無化するような確かな存在感、もっと言えば16年前よりもさらに地に足の着いた印象を与える揺るぎなさに溢れていたから。そして、「こんばんは、プリンセス・プリンセスです」とまた挨拶できることが本当にうれしいと感じている、その高揚が客席に伝わって増幅し、大きな幸福感を作り出していく。そうしたステージと客席とのコラボレーションはやはり彼女たちならではのもの。プリ・プリ、健在である。
TM NETWORKのステージは、古典の重厚さと前衛の先鋭性を兼ね備えた彼らの個性が凝縮された形で表現された濃密なものになった。サポートは、北島健二(g)、西村麻聡(b)、山田わたるのフェンス・オブ・ディフェンス。高い技術に裏打ちされた隙のない演奏が、TMの音楽世界のスケール感をより強く印象づけてみせる。そして、中盤に挟み込まれた小室哲哉のキーボード・ソロが、その世界の中心にある衝動を提示する。高まるロマンを不条理な破調が鋭角的に切り裂く刹那のきらめきがなんとも美しい。そこから生まれた、デジタル・サウンドで肉体的な衝動を表現するという80年代の夢は、メンバーの成熟を得ていよいよロマンティックに進化したと実感することになった。
米米CLUB
1.愛 know マジック
2.嗚呼! 浪漫飛行
3.気味がいるだけで
4.WE ARE MUSIC!
5.ジェームス小野田登場テーマ〜Live in PARIS〜Tomorrow is another day 〜Oh米GOD
6.狂わせたいの〜どうにも止まらない
7.SHAKE HIP
プリンセス・プリンセス
1.世界でいちばん熱い夏
2.Diamonds
3.GET CRAZY!
4.M
5.SEVEN YEARS AFTER
6.OH YEAH!
7.ROCK ME
TM NETWORK
1.BEYOND THE TIME
2.KISS YOU
3.We Love The Earth
4.Love Train~Keyboard SOLO
5.Be Together
6.Get Wild
7.SEVEN DAYS WAR
[ENCORE]
1.Self Control