2011.12.14  the pillows@Zepp TOKYO

 彼らが、1年の締めくくりに東京・大阪・名古屋をまわるミニツアーを行うのはすっかり恒例になった。この日は、その最後の東京公演。つまり、彼らにとって、今年最後のワンマン・ライブである。

 ファンにとって、このミニツアーがうれしいのは、新作ツアーではあまり披露されないような曲が織り込まれていることで、この日も「今日やったら、もうしばらくやらないだろうなという曲」(山中)が、「THAT HOUSE」(『LITTLE BUSTERS』収録)をはじめとして、何曲か披露された。ちなみに、「THAT HOUSE」は「自分で作っていながら、歌が苦手」という理由でこれまで披露されなかったそうで、その曲をこの日取り上げたということは彼のなかでボーカルに対する感じ方が変わってきたということか。あるいは、単なる気まぐれかもしれないが。

 ところで、この日の山中は「イライラして、開演前に自分で前髪を切った」そうで、そのせいか冒頭の数曲が弾け切っていないように感じられた。ところが、ちょっとしたアクシデントがあり、そこからは明らかに彼のテンションが代わり、さらにはオーディエンスの親密さまで増して、この日も”特別な夜”になった。

 その”特別”と”凡庸”との境目がじつに紙一重であることをこの日は実感することになったわけだが、その分かれ目に立っているのはもちろん山中だ。もちろん、彼はいつでもライブの時間を”特別”にすることに真摯であり続けているが、それでいながら彼自身にもどうしようもない”異物”、それもかなり獰猛な”異物”を彼は身のうちに抱えているように感じられる。その”獰猛な異物”こそがpillowsのロック性の幾分かを担っていることはおそらくは間違いなく、だからこそ山中はその”異物”を愛し、同時に最も厄介に感じているのではないか。この日、会場を包んだ親密さがひと際高まったのは、山中とその”異物”との葛藤を垣間見たからではなかったか。そして、その”異物”を手なずけ、そのエネルギーをまさにロック的に昇華した山中の、そしてpillowsのバンドとしての魅力を再確認した一夜だった。