2011.12.10  黒沢健一@東京グローブ座

 3年目となった東京グローブ座での年末ライブ。過去2年はストリングス・カルテットをフィーチャーしてのステージだったが、"NEW DIRECTION"と題したこの日は、黒沢の歌とギター、それにピアノという基本形にトランペット/コルネット、サックス、そしてチェロを加えた5人によるステージだ。

 ドラムとベースという、通常のバンドではリズムを作る楽器がない編成だから、当然最初はムーディーな感じで始まったが、その空気を打ち破るようにいきなりハイテンションで黒沢が歌い始めると、そこから音楽全体がどんどんドライブしていくことになった。そのボーカル主導性は、おそらくは最近の彼の音楽の太い幹になっているようで、「新しい方向性」という意味のコンサート・タイトルも考え併せれば、この歌のドライブ感が彼の次作の方向を決めることになるのかもしれない。

 もっとも、このスペシャルな編成での演奏に、黒沢自身が興奮し、また緊張していたことは明らかで、だからこそのいきなりのハイテンションだったんだろうし、2度にわたってギターにカポをするのを忘れていたのはいかにも彼らしい。それにしても、かれの音楽の骨格がいよいよあからさまになるこうしたライブが、NEW DIRECTIONへのイメージをふくらませたことは間違いないと思う。