2011.1.23 甲斐バンド@PLEASURE PLEASURE 

 

 昨年12月に公開された映画「照和~My Little Town~」の渋谷での上映が終了するタイミングに合わせて実現したスペシャル・ライブ。その3デイズ公演の最終日である。

  元々は映画館だったこの会場は、椅子席がゆったりしているからオーディエンスとしてはつい落ち着いてしまう環境と言ってよく、逆にステージ上からしてみれば甲斐いわく「無駄に近い」から間合いの取り方が難しい。そんななか、その映画にもなった照和でのライブのように、まず甲斐ひとりで登場し、そこから松藤英男、田中一郎とメンバーが順番に加わっていく構成だった。

 ガランとした印象のステージセットは、おそらくは先の映画で語られている時代の甲斐たちが熱い日々を過ごした照和の地下倉庫兼楽屋がモチーフだったはずで、つまりはこの日のステージは彼らの”始まりの場所”が舞台として設定されていたわけだが、その設定がいよいよ彼らの”現在”を際立たせることになった。それは、照和から始まった時間の蓄積の意味と価値を踏まえているからこその”現在”であり、そういう”現在”に立っているからこそ鳴らせる音の味わい深さがこの日のステージのいちばんの魅力だったと言えるだろう。

 もっとも、その魅力はただ甘いだけではないようにも思う。例えば、アンコールの最後に演奏された「バス通り」の♪学生だった僕にうまく愛は語れなかった♪というフレーズを、十分に大人になった世代はただノスタルジックに聴けばいいのか? それだけでは不十分だと思わせるほどの緊張感を、この日の演奏がまとっていたことを見逃してはいけないと思う。

 

 

1.東京の一夜

2.薔薇色の人生

3.最後の夜汽車

4.野生の馬

5.きんぽうげ

6.花、太陽、雨

7.裏切りの街角

8.安奈

9.三つ数えろ

10.漂泊者(アウトロー)

11.ポップコーンをほおばって

12.風の中の火のように

[ENCORE-1]

1.そばかすの天使

2.地下室のメロディー"Big Nightバージョン"

[ENCORE-2]

1.新宿

2.バス通り